今日はひさしぶりに髪を染めた。
いつもの美容院で。
そこは家から1時間くらいかかる場所にあって、
通うにはまあ不便ではあるんだが、
通いたい理由があるから仕方ない。
スタイリストの技術やセンスがたしかであるのはもちろん、
彼との話がおもしろいのだ。
その人は、見た目は失礼にもイケメンとは言えない、
いわゆる中年の男性である。
わたしを笑わそうとギャグをかましてくるが、
たいていすべる。
そして「すんません」と言いつつ、
一人で笑っている。
いま思ったけど、そう、藤本探偵みたいな感じだ。
王様企画の団員なら想像できるだろう。
おもしろいといっても、
”fun”ではなく”interest”の意味に近い。
その人は、見た目はちゃらけた風でいても、
とても思慮深く、インプットの幅が広い。
人と話しているとき、
すぐに「なぜ?」と物事の本質を知りたがるわたしにとって、
とてもいい話し相手なのだ。
とまあ前置きが長くなってしまったが、
今日のテーマは「強さとは何か」。
なぜ「強さ」というテーマで語り合ったのか。
それはスタイリストさんが、
最近You Tubeにはまっているという話から始まった。
その中でも、
「虫」
に興味があるということだった。
この時点ですでに、わたしの好奇心は反応しまくっている。
彼の話をかんたんにまとめると、
「世界最強の虫はアリだ」
「アリはオオスズメバチにも勝つ」ということなのだが、
肝心なアリの名前を忘れた。
たしか、アフリカかどっかの国にいるアリだったと思う。
知っている人は、こそっと教えてほしい。
わたしはグロ系が苦手なので見れないけれど、
獰猛な虫どうしを対決させて、
どちらが勝つのかを検証しているユーチューバーがいるらしい。
そのユーチューバーいわく、
世界最強の虫はアリなんだと。
名前忘れたけど。
動画の内容はともかく、
わたしは感動してしまった。
世界で最小クラス(と言えるであろう)アリが、
世界最強なんである。
何倍、何十倍も身体がでかいオオスズメバチにも、
勝ってしまうのである。
ポケモンで例えるなら、
カイリュウに向かってポッポがつつきまくっている感じだろうか。
強さの秘訣は、アリの顎の力にあるらしい。
それで、ハチの身体を噛みに噛む。
たしかに人間だって、アリに噛まれると痛い。
あれが集団で攻めてきたら、めっちゃ嫌だ。
そのときに、わたしは思った。
強さに大きさは関係ないんだと。
と同時に、もひとつ思った。
そのアリの本当の強さとは、顎の力なのかどうなのか、と。
たしかに、顎の力は相当強いのだろう。
しかしそれは、あくまでも武器であって、
たんなるツールともいえる。
本当の強さは、
自分よりもはるかに大きい敵に屈せず立ち向かい、
噛んで噛んで噛み続ける。
その精神力にあるのではないか。
もしくは、集団でどうやって敵をたおすのか、
その戦略設計にあるかもしれない。
そう考えると、わたしはこのアリを勝手にリスペクトした。
髪にカラー剤を塗ってもらいながら。
そして、わたしはスタイリストに投げかけた。
「強さって何なんでしょうね」
続けて、こう言った。
「強いと弱いなら、わたし自身は弱いと思います。わたしには軸がないから」
「それって弱いの?何なんでしょうね〜、強さって」
スタイリストが言った。
そうして、ふたりの思う「強さ」を語り始めた。
家に帰って調べてみたのだが、
辞書には強さ(強い)とはこう書かれてある。
⑥ ゆるみがない。かたい。
⑦ 明瞭である。はっきりしている。
⇔ 弱い
【出典:Weblio辞書】
ちなみに、わたしがそのとき思った強さとは、
しなやかさだった。
パワーのことではなく、精神的な意味での。
芯はあるが、どれだけ風に吹かれても折れない。
折れない硬さをもちながらも、
風を受けてしなる、竹のようなしなやかさ。
そしてスタイリストさんの強さとは、
自分は「これを大切にしている」と誇れることらしい。
わたしは自他ともに認める自己肯定感が最底辺の人間なので、
誇れるものも、胸をはって言えるものも正直見つからない。
むしろ、答えられるひとっているのだろうか。
それからわたしとスタイリストの議論は続いた。
カラー剤を塗り終わってシャンプーを済ませ、
ドライヤーで髪を乾かし終わるまで。
だいたい1時間くらいだろうか。
結局ふたりの答えは見つからなかったけど、
わたしはしばらく考え続ける気がする。
強さって何なのか。
強いの反対語って、弱いなのか。
答えられるひと、教えてくれないか。
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