秋は夕暮れ
- 王様企画
- 2019年11月6日
- 読了時間: 2分
「好きな季節は何ですか?」
そう訊かれてあなたはどう答えるだろう。
芽吹きの春だろうか。
色濃く映える夏だろうか。
極彩色の秋だろうか。
音のない冬だろうか。
かの清少納言先輩は「春も夏も秋も冬もいいところあるじゃん!(*'ω'*)」と書き残した。
数百年前のブロガーが言ったことではあるが、私はこれに大賛成である。
少しずつ暖かくなっていく春も、
うだるような夏も、
薄れていく秋も、
シンと冷える冬も大好きだ。
タンポポの咲く春も、
ひまわりの夏も、
ヒガンバナ咲き誇る秋も、
椿が静かに主張する冬も大好きだ。
ということで私の好きな季節は「春夏秋冬」だ。
ついでに言うと晴れの日も曇りの日も雨の日も雪の日も大好きだ。
なんなら朝も昼も夜も大好きだ。
つまり、私は基本的に年がら年中「今日はいい日だなぁ」と思い続けているのである。
春の晴れた日も、夏の夕立も、秋の木枯らしも、冬の雪も。
おぼろ月の春の夜も、風薫る初夏も、鰯雲の秋も、空っ風の冬も。
なんてことない朝も、旅先の雨も、帰宅時の夜も。
代わり映えしないときも、そうでないときもすべて「いい日だなぁ」と思い続けている。
そんな私だが、「中でも好きな季節は?」と訊かれれば迷わず「晩秋」と答える。
丁度今頃だ。
特に晩秋の黄昏時が一番好きだ。天気は少し雲がかっているのがいい。
秋なのか冬なのか、夕方なのか夜なのか、晴れているのか曇っているのか、
すべてが曖昧なあの空間に身を置いていると、
まるで自分が全く別の世界に存在しているような、
フィクションの世界に飛び込んでしまったようなそんな錯覚に陥るのだ。
薄暗く染まったこんなにも曖昧な世界で、私が私であることを認識できなくなってしまう、そんな晩秋の黄昏時がとても心地よく、
またその感覚が「私はここにいるのだ」ということを強く認識させていく。
365日24時間が好きな自覚のある私だが、それでも晩秋が近づくと心が色めきだっていく。
とても美しく、もの悲しく、きらびやかで、色のない、なんとも矛盾した世界に
今年もまた飛び込んでいこうと思う。
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