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執筆者の写真王様企画

ひったくりと遭遇した噺

ひったくりとかけましてカメラマンと説きます。 その心は、どちらも一瞬でとってしまいます。


これから私のブログは謎かけで書き始めることとしました。 テトリスです。

ご無沙汰やでみんな待たせてごめんやなあホンマに~ 今日はタイトル通りの実体験、所謂ノンフィクションってやつを臨場感たっぷりに書き綴りっていきます。 ちょっと長くなるかもしれへんけど最後まで読んでってなあ。深いから。ズブズブに深いから。最後にはちょっと皆に聞きたいこともあるんよ。ほな!綴っていくでえ。


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あれは忘れもしない去年の10月20日、日曜日の出来事。 第80回“菊花賞”の日である。 菊花賞と聞いてピンとくる方は世間的にはあまり多くないかもしれないが、競馬人であれば知らない者はいない。後世に語り継がれる名馬たちがこのレースを走っているのだ。日本競馬会で最もグレードの高いGIに位置付けられる菊花賞では、競馬と無縁の方にも名の知れたレジェンド馬・ディープインパクト、最近では演歌歌手北島三郎の所有馬として活躍したキタサンブラックなどがこのレースで栄冠を手にし、その後の競馬会の発展に貢献している。 毎年の10月に京都競馬場で開催されるこの一戦を、私は現地観戦するのが定番となっていた。 京都の芝を1周半するこのレースコースは3000メートルもの距離があり、日本競馬会ではあまり番組が組まれていない長距離戦にあたる。サラブレッドの身体能力のぶつかり合いは勿論であるが、長距離戦線においては彼らに跨る騎手の心理戦も観客を魅了する。ゲートが開いて先頭に立つペースメーカー、下り坂を利用した加速での捲り上げ、虎視眈々と内をロスなく立ち回る策士、最後の直線で彼らは人馬一体となりどんな輝きを放つのだろう。ああ、今年もこの日がやってきた。今日は、今年のこの一戦はどんなドラマが繰り広げられるのだろうか・・・ そんなことを考えながら私は競馬場に向かっていた。まだ朝の4時半。 家から最寄りの鉄道駅までは徒歩で30分。普段の通勤なら駅までバスを用いるが、バスの始発はまだまだ先。朝というより夜道というべきこの明るさだ、車も全く走っていない。人もいない。コンビニと少ない街灯が頼りなく照らす道を最寄駅に向かって歩く。昼になれば汗をかくに違いない濃紺のジャンパーを羽織り、カメラやシートやなんやらやを詰め込み膨れ上がった黒のリュックを背負い、家から10分歩いたころにはもう背中とリュックの密着面にじっとり汗が。 今日初めて目の前に人影が見えた。同じ方向へ歩みを進めている。女性だった。菊花賞に心躍らす私はすぐに彼女を追いぬいた。が、程なくして赤信号に引っかかってしまい一時足並みを揃える形となる。ゲートを出る競走馬のごとく青に変わっての一歩を踏み出す。上々の出足。さらに高ぶる菊花賞への感情。今日ゲートを出て先頭に立つのはどの馬か。明確な逃げ馬が不在の今回はシフルマンか、それともユニコーンライオンなんかが大逃げを打つのかもしれないなあ、とレース展望が止まらない。 その時だった。 ??「きゃあ!」 脳内「女性の叫び声や!!」 脳内「後ろから聞こえたぞ!!」 脳内「さっきの人、よな?」 振り返ると、先ほどの女性が車道側に持っていた手提げバックを小型バイクに跨った男に引っ張られている。私とその犯行現場までは距離にして15メートルほど。 脳内「ひったくりや!!」 私 「おい!」 ※こうやって文字に起こすと伝わらないかもしれませんが「きゃあ!」から「おい!」まで実際3秒とかかってません。 脳内「こういう時って声出るもんやな(感心)」 脳内「バイクの音なんか聞こえんかったぞ」 脳内「にしてもめっちゃ声出よなあ(嬉々)」 そして、脳内感情の間も私はその犯行現場を見ている。犯人はこちらを向く。目が合う。 フルフェイスだから見えてないけど合ってたでしょうきっと! 脳内「あ待って待って。これあっち武器持ってたらゲームオーバー。バイクで突っ込んできてもゲームオーバー」 闇に溶け込む黒を纏ったひったくり集団。 しかし私の声が思いのほか大きくてやばいと悟ったのだろう、バイクはゆっくりとUターンの動きを見せた。 私は走った。走り去ろうとする2台のバイク。ん、2台?見張り役か?せこい。こすい。最低。3点揃いました。抜かりのない奴め。 だが捕まえは出来なかった。速力が違う。みるみる内になんて表現も遠く及ばないくらい刹那的に引き離された。

私が陸上部の現役時代でも無理だ。地区予選敗退レベルだもの。

ナンバープレートも暗くてよく見えない。15メートルのハンデを何故生身の人間が背負わなきゃならんのだ。バイク側が背負えよ。バイク自体がアドバンテージだろうが!


逃げ去った犯人を目で追い、周りの安全を確認して女性のもとへ駆け寄る。 私 「大丈夫ですか」 女性「うううう・・・鞄は大丈夫だったけど、腕を擦りむいて」 確かに突き出されたその腕には血が見て取れた。女性は泣いていた、息も荒れている。そして対面して初めて、何もひったくられていなかったことを知った。ひったくりの犯行は防げたが、彼女はその身体に傷を負う結果となってしまった。騒ぎを聞きつけたのか、当直の休憩の合間のコンビニタイムかは本人のみぞ知るところだが、現場の前の●●総合病院から先生も駆け寄ってこられた。 私 「すいません、この方をお願いします」 先生に彼女の身を預け、私は自分のスマホで110番通報した。 生まれて初めての通報。イタズラでもかけたことはない。生まれて初めての110番通報。 警察「○×※△◆☆!」 脳内「???え、何?」 警察「◎※◆ですか」 脳内「???なんて?」 警察「事故ですか、火事ですか」 脳内「はいはい、聞いたことあるよこのセリフ」 女性が気になって第一声から暫くがよく聞き取れなかったが無事理解。 私 「事件です。たった今、●●病院前でひったくりです。犯人は××方面へ逃走しました」 脳内「意外と冷静に対処できちゃうもんよねえ…」 その後の流れとしては下記である。 ・警察に事情を説明。 ・女性と変わって、女性が説明。 ・程なくしてパトカー2台到着。 ・事情聴取。 ・解放される私。


まあまあ負けた菊花賞。



あれから日は経ったが、犯人は捕まったのだろうか。

現場となった病院前の道路付近に注意喚起の看板すら見当たらない。

平和ボケして住み慣れたこの町で、こんな物騒な事件に出くわすとは本当に思ってもみなかった。だが、今は変化の時代。危機管理の在り方も今までと一緒ではいけないのかもしれない。

この体験を通して皆さんに伝えたいことは下記の3点になります。

・治安がよくても事件は起こります。日頃から身構えておきましょう。

・暗い道や人通りが少ない道では360°確認しながら行動しましょう。

・実際に遭遇してみないと、犯人の特徴とかナンバープレートまで気が回りません。もしもを想定して実際に気が回るよう備えましょう。

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さ!ところで、最後に聞きたかった質問。

このノンフィクションの体験談(菊花賞の負けも事実)、登場人物の女性の年齢をいくつ位でイメージされましたか?

恰好や特徴などは敢えて書かず、女性と言うワードだけで書き上げてみました。

面白いことに、この話を多少の詳細度に違いはあれど“女性”については全く同じ情報量のまま会社内で話してみたところ、ほぼ全員が20代から30代前半で想像したんですね。30歳に差し掛かろうという男が話をしたからなのか、それとも“女性”ワードの個人解釈の強さなのか。両方なのか、別の事情なのか。理由は本人にしかわかりませんが。

刷り込み・思い込み、人は勝手に物語の理想像を作り上げますね。

それ故に伝える側というのは、しっかりと偽りない事実を伝達する工夫や裏づけが必要なのだと実感した後日談でした。

ちなみに正解は、60歳前後。

あくまで私が見た個人的な主観になるんですけども。



てとりす

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