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執筆者の写真王様企画

カカオ豆からチョコレートを作ったので噺を聞いてほしい



お久しぶりですね皆さん、テトリスです。


二月の最終週、バレンタインデーにプレゼントとしてもらったチョコレート製作キットを開封しました。


バレンタインデーからそう日が経たない内に臨むべきだったのですが、都合が宜しくなく気づけば三月手前での挑戦となってしまいました。誇らしげに言うことではないが実に社会人らしい。


このチョコレートが出来るまでの想像を絶する一人激闘の様子を、ぜひ誰かに共有したいと思ったので綴っていきます。恐らくめちゃくちゃ長くなります。


それではプレイボール!!





さてこのキットなのだが、タイトルの通りカカオ豆からチョコレートを作るという我々の日常の延長ではまずもって触れられない経験が詰まっている。


パッケージの中から出てきたのは雰囲気漂う冊子、カカオ豆、チョコレートの型枠の以上三点。


童心に戻りおもちゃ箱を開ける時にも似た心持ちで冊子をめくる。冊子の中身は三つの章に分かれているようだ。


第一章では、小さな子供にも分かるように原料のカカオについての情報が書かれていた。

その昔カカオがお金の代わりとして流通していた地域があったとか、ニセ札ならぬニセカカオ豆が出回ったとか。歴史から産地の情報、カカオの木って幹に直接花が咲くんでっせその数なんと年間数千個!どや!みたいな植物カカオの生態についてなんかが写真とともにふり仮名つきで説明されていく。

一章を読んだだけでいい歳した大人の知的好奇心はグリグリとくすぐられてしまったので、子供ならお母さんお父さんねえねえ聞いてよ連発で二章到達まで相当に時間が掛かること必須だろう。


第二章には当キットの目玉要素、カカオ豆からチョコレートを作る手順が載っている。どうやら工程は下記の九つに分けられるそうな。


洗う→焙煎→皮むき→砕く→湯煎→砂糖→練り上げ→冷やす→完成!!!!


それでは私の死闘を流れとともにお届けしていこう。


●洗う

カカオ豆を袋から出してボールに移す。こんにちはカカオ豆さん。

小さな茶色い球体からは濃ゆい香りが放たれている。カカオの%でチョコレートのビター具合が決まってくるわけだが、なるほどこれが純度100%ということか。苦みというよりこの濃さは酸味から来ているといっていい。


手順書に従い水洗いすること5分。綺麗になったカカオ豆は黒土色からカカオ色になった。ベースが茶だから結局茶色は茶色だ。見違えりましたあ!なんて熱量までは及ばないが綺麗になったカカオ豆さん。


●焙煎

洗ったカカオ豆の水分を拭き取って、弱火にかけたフライパンで煎る。手順書に従って焦げないようにカカオ豆をへらで混ぜ続けること20分。パチパチと香ばしい音を響かせる豆。手に取り親指と人差し指の圧をかけるとパリパリ音をたてて割れる豆。

ああこれがカカオですわいと言わんばかりの香りが広がる。



●皮むき

全ての豆の皮をむいていく。一つずつ真心込めてむいた代償で私の母指球は悲鳴を上げている。しかしそれすら楽しさに感じている、チョコレート作るの楽しいいいい!!皮からその姿を露わにしたカカオ豆を、この日のために購入したミニすり鉢に投下。


これがチョコレートになるんだ、そうだ生を感じようとTHEカカオを口に入れてみた。全然美味しくない。苦い酸い渋いのトライアングル。後に引く嫌なトライアングル、秀でているのは香りでも感じた酸いのステータスだと思われる。



●砕く

この日のために購入したすり鉢を抑え、この日のために購入したすりこぎ棒でカカオの粒を力一杯すり潰す。ゴリゴリゴリゴリ無心になってすり潰す。

指示書には砕く前、途中、目標到達点の三段階のカカオ状態写真が載っている。目標到達点はこれまた本当にサラサラ。砂利は認められない。放課後に作ったサラサラ砂の泥団子が頭に浮かぶ。


…いやしかしカカオよ、君は本当にサラサラになるのかい。もう一時間はゴリっているぞ?まだ二段階めだよね君。これ絶対明日筋肉痛だわ。



「大変な作業だけど、ここが踏んばりどころ!」と指示書。大変っすわ、いやあ大変っすわ!!好奇心でどうにかなっていた気持ちが徐々に折れそうになってきているのがわかる。


「お手持ちのフードプロセッサーを使うと時間短縮になります!」と指示書。せっかくの体験なんだ誰がフープロに頼るかよ、とすり鉢すりこぎ棒を揃えた自分を呪いたい。家にフープロあんじゃんよ使っとけよ自分。ダメだ心は半分折れた。惰性でゴリっていくこと更に45分。


カカオの様子に変化が起きる。こね続けて遂に粉末化したカカオなのだが、すり鉢の底面と一体化してしまった。サラサラとは何ぞや。一体化しちゃったらサラサラとかわかんなくね?どういう状況よこれ。目標到達点の写真を確認する。あれ、よく見たらこの写真もカカオと鉢底一体化しちゃってる説。と言うよりもう説実証ではないかね。そうだよ、そうそう好奇心消えちゃって疲れで投げやりかもしれないけどここがイコール到達点。



疲れきってしまったので行きつけのカフェで一服。皮肉なことにチョコレートケーキのセットを注文した。


●湯煎

深煎りのコーヒーとチョコレートケーキを堪能して帰宅。HP15回復。さあ湯煎頑張ってくか。いや、湯煎は頑張るもんじゃないかと甘く見ていた自分が馬鹿だった。


ポットで沸かした湯を入れたボールにカカオ鉢をつける。すりこぎ棒で混ぜる。「すると少しずつチョコレートが溶けたような状態になります」と指示書。力加減が変わっただけでやってることはさっきと変わらない。さあさ溶けろ、溶けろよカカオと念を込めて混ぜこねる。一体化していたパサパサカカオの塊が鉢底から剥がれ出した。前進が見られたことで気力が出てきてこねる手に力がこもる。溶けろよ溶けろよカカオよ溶けろ♪鼻歌混じりでこね続ける。だが悲しいかなカカオの変化は極めて僅かなものだった。



確かに確実に溶けてきている。溶けてきているのだが、目に見える変化スピードではない。つまりまああれよ、ほぼ溶けてないわけよ。

再びドッと疲れが押し寄せる。いや、指示書に“少しずつ”と記載はあるのだ。あるのだが、砕き工程で2時間近くすりこぎ棒を握った身としてはつい弱音を吐きたくなる。それに砕き工程で「ここが踏んばりどころ!」って謳ってたでしょうが。砕き終えたら出口が見えると思うでしょうが。湯煎工程も踏ん張りでしょうが!少しずつが過ぎるでしょうが!出口なんて見えないでしょうが...出口どこ。


私の体力はゼロになった。1時間も湯煎したのだ。今日ここまで耐え凌いだ自分自身を褒め称え、冷蔵庫にチョコレートになるであろう彼をしまった。


もうお分かりの通り、このチョコレート作り体験は一日で済まなかった。子供がやったらどうなるんだ。ワクワクした顔がみるみるうちに萎むかもしれない。いやずっと好奇心でワクワク楽しいハッピーラッキーなのだろうか、わからない。ただ、いい歳した男の目に4時間前の輝きは宿っていなかった。さあ明日も頑張ろうぜ自分。


この続きはまた今度。

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