2022年5月29日、日曜日。
今年もこの日がやってきた。
人々はこう呼ぶ。
日本ダービーと。
そう、東京優駿のことである。
日本ダービーとの呼び名で定着しているが、正確には東京優駿。
7522頭の3歳馬の頂点を決めるレース。
東京競馬場・芝2400Mを選ばれし18頭が駆け抜けるのだ。
王様企画で頭一つ抜けて競馬に時間を捧げている私にとって、このレースかける想いはやはり大きい。
ネットでの馬券購入が波及しきり、いつでもどこでもレース発走の二分前まで投票ができるギャンブラーにはたまらない時代になった。
そんな日本ダービーデー。
私は一つの問題に直面していた。
ネットと連動させている銀行口座のカードが使用できなくなったのである。この口座にお金は入っていない、入れなければ馬券が買えない。
ダービー前日も当日も稽古なのである。
いつでもどこでも買えるこの時代に、全国の競馬ファンが一年で一番大盛り上がりのこのレースに、私は参戦できない...
件の銀行カードは、デビッド機能付きのものだった。そのため期限があるのだ。そう、期限が切れていたのだ。11ヵ月も。
...え、11ヶ月も?
きっとその間は口座にお金が残っていたのだろう、当たってはずれてを繰り返して底を尽きたに違いない。いくらかは覚えていないがよく11ヵ月持たせたものだ自分を誉めたい。
しかし11ヶ月もの間放置した己も己である。それもそのはず、銀行に住所変更届けを出していないことが判明した。更新の案内が届いていないのだ。
誰を恨むこともできない。己が100で悪い。
思わず笑いがでる。
・いや俺別のクレカ使ってるやん。
・デビッド持ってたんかい俺。
・え、もうこれデビッド解約した方が安全ちゃう。
・馬券買えへんやん
日本ダービーに...東京優駿に...
馬券が...
買えない...
あってたまるかそんなこと
何としてでも買わねばならない。ダービー馬券の購入は使命である。買わねばならないのだ、何としてでも。
前日の土曜日。
この稽古場なら場外馬券売場まで、ダービー馬券が買いに行ける。そう気づいた。
午前と午後間の休憩時間。
団員がランチで腹を満たしに行く中で、ひとり己の欲を満たすべく、私はウインズ難波へ早歩きで向かった。
馬券が、購入できた。
サラブレッドと同じ。
これで私もゲートイン完了。
あとはゲートが開く明日の15時40分を待つのみ。
その待ちに待った時間は稽古中であった。頭の中に競馬の文字はない、役のことで満たされている。
ああ鮮明に覚えている。
5月29日16時04分、稽古が小休憩に入った。私の頭は東京優駿で満たされた、破裂しそうなくらいだ。
同じ背丈の競馬好きな団員と、レースの映像を追った。どくどく心臓の鼓動が高まっている。
そして馬券は紙屑になった。
いつになったら私がダービーを的中させる日は訪れるのだろうか。来年か再来年か、10年先か。誰か教えてくれ。
なあ、なんでお前的中させてんだよ。
同じ背丈の男よ。
王様企画
第三回公演『ひとける』
coming soon...
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